tokuchan-worldのブログ

外国ってこんなとこ〜

第84話 ガウディの街

サグラダファミリア

 

[1997年6月 スペイン  バルセロナ]

 

 バルセロナ=エル・プラット空港 (Aeropuerto de Barcelona-El Prat)で出迎えてくれたのは 取引先の社長であるアントニオ、通称トニ (Toni)。彼は10才年上だが何故か波長が合い、生涯で一番仲良くなった海外の仕事相手かも知れない。

 

 仕事には厳しいが、一旦仕事を離れると陽気で気さくな男、アミーゴである。時間が空けば町中を案内してくれる。バルセロナと言えばサグラダファミリアカサ・ミラグエル公園など至るところで巨匠ガウディの作品を見ることができる。

 

 俺はガウディと同じ名前、Antonioなんだよと誇らしげだった。

 

第83話 名曲の舞台

雲の切れ間に見える レマン湖

 

[1997年6月 スイス  チューリッヒ => スペイン  バルセロナ]

 

 チューリッヒで乗り継ぎ、スペインはバルセロナに向かう。今度はフランス、スイス、イタリアにまたがるフランスアルプスを越える。

 

 その手前でひときわ大きな湖が見えてきた。中央ヨーロッパで2番目に大きなレマン湖だ。英名は Lake Geneva、ハードロックの名曲 Deep PurpleSmoke On The Waterの舞台となったところだ。もちろんあの有名なギターのリフが頭の中で鳴っている。ライブ盤ではなく“Machine Head”盤で。

 

 雲の間から大きな噴水と綺麗な湖水が見える。当然ながらこの日は煙は見えなかった。この湖の畔りで あの名盤が録音された。興奮、鳥肌、感慨深かった。

 

 そしてフランスアルプスを飛び越え、青い地中海上空へ出る。情熱の国スペイン、バルセロナはもうすぐだ。

 

第82話 アルプスの中を飛ぶ

スキージャンプ台よりインスブルック市内を望む

 

[1997年6月 インスブルック => チューリッヒ]

 

 インスブルックからスイスのチューリッヒへ飛ぶ。早朝便の為 タクシーで5時前に空港に到着するが、空港は閉まっている。小さな空港だ。空港が閉まっているのはこれが最初で最後の経験だ。

 

 夏休みでどこかへ旅行にでも行くのだろうか、他に5人位の若者が待っている。10分ほど待つと、建物内の明かりが点き始め玄関が開いた。すべての手続きを済ませて搭乗口へ向かうと、ガラス戸の向こうに短い滑走路が1本見えている。飛行機は?と見ると、少し離れたところにやはり小さな機体が駐機している。そこまで歩いて行き、タラップを上る。小さな飛行機なので天井に頭が当たりそうだ。座席は11列目となっていたので、前の方だと思っていたが乗ってみると後ろから2列目だった。

 

 離陸後も高度はそんなに上がらない。アルプスの山々を下に見ながらの飛行かと期待していたが、山は横に見え その合間を縫って飛んでいる。風で流されれば山にぶつかりそうで少し恐怖を感じた。雨も降ってきた。窓ガラスの向こうで雨粒がほとんど水平に後方へ流れる。窓の横に景色が見え、常に雨が降っている。まるで車か電車にでも乗っているような感覚だ。朝食に出されたサンドイッチを食べながら雨に濡れた岩肌を見ていた。

 

第81話 あぁ そう

オーストリア インスブルック

 

[1997年6月 オーストリア  インスブルック]

 

 この代理店の社長と打ち合わせや食事で2-3日を一緒に過ごしたわけだが、話をしていてずっと気になることがあった。

 

 こちらが話していると、時々「あぁそう」と聞こえる。この人は日本語で相槌を打っているのだと思っていた。簡単な言葉なので知っているのかなと。

 

 ところがそうではなかった。少しイントネーションは違うが、この地方の言葉なのだそうだ。熊本県の“阿蘇”の“あ”を少し長く伸ばして、"あ" より少し低い音程で “そ”と言う感じ。意味は日本語と同じ。

 

第80話 由緒あるホテル

インスブルック ホテルの窓から

 

[1997年6月 オーストリア  インスブルック]

 

 オーストリアの西部、チロル州の州都インスブルック (Innsbruck)へやって来た。1976年、札幌の次に冬季オリンピックが開催されたウィンタースポーツの地である。アルプス山脈に囲まれ、少し郊外へ行くと山頂に雪をかぶった岩山がそびえ、その麓には緑の緩やかな斜面が広がる。赤い屋根の山小屋。今にもハイジが駆け出して来そうな景色だ。

 

 欧州の他の国や街と同様に古いものを大切にしている。宿泊したホテルは、この街の名前の由来となった“イン橋”のすぐ近く。インスブルックとはイン川にかかる橋という意味だ。

 

 過去に宿泊した有名人の名前が入り口のプレートに刻んである。部屋は最上階、といっても6階位。屋根裏部屋のようで、天井が屋根の傾斜と同じだ。窓枠は趣のあるいかにも欧州という作り。その窓の向こうにはやはりアルプスの山々がその白い頂きを見せている。仕事抜きでのんびり訪れてみたいところだ。

 

第79話 北東アルプス山脈を越える

オーストリア インスブルック

 

[1997年6月 ドイツ => オーストリア]

 

 プリーンでの打ち合わせを終える頃に、一人の男がやって来た。次の訪問先である隣国のオーストリアインスブルックから車で。そんなに遠くでもないし、アウトバーンが整備されているので迎えに行くと言ってくれたのだ。夕方にはドイツ側との打ち合わせも終わり、車に乗せてもらって移動する。

 

 初めての陸路での国境越えだ。日本にいては経験できない。プリーンのすぐ南にはドイツとオーストリアの国境を成す北東アルプスが走っていて、これを越えるのだ。国境には踏切の遮断機ようなものがあり、路面には線が描いてあるが、すでにEU内は移動が自由になっていて開いたままになっている。よほどのことがない限り、係官も停止を求めない。

 

 しかし、こちらとしてはせっかくやって来た外国だ。入国のスタンプが欲しい。お上りさんか!? わざわざ車を停めて係官のところへ行き、スタンプを押してもらった。係官も笑顔で応じてくれた。

 

第78話 公衆電話

小高い丘の上にあるレストランから見るドイツ プリーンの風景

 

[1997年6月 ドイツ プリーン]

 

 ミュンヘンからプリーンまでは列車で1時間くらいの乗車だ。例によって車内放送はない。検札に来た車掌にプリーンに到着する時は教えてくださいとお願いすると、次に停まるよと親切に教えてくれた。

 

 迎えに行くから、駅に着いたら電話をください。取引先からはそう言われていたので、駅前の公衆電話ボックスに入った。しかし、電話のかけ方が分からない。日本では携帯電話を使っているが、まだこの頃は海外で使用できるものではなかった為おいてきたか? 記憶が定かではない。教えてもらおうにも人がいない。どうしたものかと困っていると一人の女性が歩いて来た。

 

 電話番号が書かれた紙を見せて、ここへ電話したいのですがと伝えた。その横には住所も書いてある。すると女性はここへ行くの? 私の家のすぐ近所だから乗せて行ってあげるわとありがたいことを言ってくれるではないか。ご主人を駅まで送り届けて、今から帰宅するのだと言う。

 

 駐車場に停めてあるワンボックスカーの前で、さぁどうぞ乗ってくださいと後部座席のドアを開けるとそこにはセントバーナードのような大きな犬が乗っている。一瞬足がすくんだ。おとなしいから心配しなくていいわよ。恐る恐る大きな犬と同乗、目的地に着いた。見知らぬ土地で見知らぬ人のご厚意、本当にありがたい。感謝。

 

 事務所に入ると、取引先の担当者はどうやって来たの? とびっくり。事情を話すと、今回の出張は幸先のいいスタートだなと笑っていた。