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外国ってこんなとこ〜

第7話 自動小銃を前に口論

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ジャイアント パンダ 於 グィリン (桂林)動物園

 

[1982年11月 クォンツァウ(広州)]

 

 香港から中国本土入国。クォンツァウ パックワン (広州白雲)空港に降り立つ。グィリン(桂林)へ行く為の乗り換えであるが、入国審査や手続きはここで行い次は国内線に搭乗する。

 そしてこの入国審査で初めて経験する外国人との大論戦が勃発する。

 

 日本を出国する時もそうであったが、時計やカメラなど貴重品を事細かく書類に書き込む。入国時と出国時にその申告書と現物を照らし合わせて物品の過不足がないかを審査するのである。入国時に申告書に記載されていないものを持っていると関税を免れ国内で販売しようとしていると疑われ、また出国時に何か物品が無くなっていれば国内で販売したとして税金が課せられたりするのだ。

 

 初めての海外、しかも観光旅行なのだから趣味の写真を出来るだけたくさん、いいものを撮りたいとカメラと交換レンズ3本と小物をカメラ用のハードケースに入れて持ち込んだ。もちろん申告書には正直に全てを記載している。当然であるが何事もなく審査は終了し、待ち合わせ場所のレストランへ入って行った。乗り換えに数時間ある為ここで食事をすることになっていた。

 

 が、しばらくしてもNさんが来ない。どうやら入国審査場でもめているらしい。お前言葉分かるやろ、行ってやれ と言われ審査場へ。Nさんは言葉が分からず何が起きたのか状況が把握できていない様子だ。どうしたの?と英語で聞いたが審査官から返ってきた言葉は中国語。自分も中国語は全く分からない。英語もまだそんなに十分話せるほどではなかったが。日本語が通じるはずもない。審査官は数人いるが誰も英語を話そうとはしない。いや、話せなかったのだ。片言の英語と身振り手振りで説明され何とか状況が把握できた。どうやらNさんはカメラを1台持っていると申告書に書いているにもかかわらず彼の荷物の中にカメラが見当たらないという事らしい。

 

 あ〜っ! 彼は小さなカメラ (所謂バカチョン カメラ) を1台持っていて、入れるところがないからお前のハードケースに入れといてと言ってたな。そのカメラは俺が持っていると審査官に説明するが通じない。ケースを取りに行こうとすると、腕を捕まれどこへ行く? というようなことを言われているような!?!? 行かせてくれない。別の審査官に説明するがやはり通じない。

 審査官といってもみんな軍服のような出で立ちで小脇に自動小銃を抱えている。言葉は通じない。現物を取りに行かせてくれない。目の前には自動小銃。どうしたらエエねん?何されるねん? 冷や汗ダラダラ。ゆっくり喋り、身振り手振りで説明するとようやく解放され、ケースと自分の申告書を手にまた審査場へ戻る。こちらのケースには申告書に記載していないNさんのカメラが入っていたのに、審査官は見落としている。これはこれで見つかっていれば同じ、いやもっと酷く言われたかも知れない。入っていたことなどすっかり忘れて、審査の時に不審な態度は微塵もなかったのだろう。

 

 二人の申告書とカメラケースを照らし合わせ、またまた身振り手振りで説明してようやく解放された。優に1時間以上は経過していた。レストランで全員集合。社長も状況が分かるとにこやかな笑顔で さぁ飯食おう! チンタオ (青島)ビールで乾杯となった。

 

 ひとつ不思議なことがあるのだが、この時の中国入出国の記録がパスポートのどこにもない。まだまだ規制が厳しい時、団体はまとめて何か処理したのだろうか?