tokuchan-worldのブログ

外国ってこんなとこ〜

第29話 ホンコン(香港)の路地裏

f:id:tokuchan_world:20211228000516j:plain

サムスイボウ(深水埗)の市場 ホンコン(香港) 

 

[1988年7月 ホンコン(香港)]

 

 この出張中、シンガポールでもホンコン(香港)でも道を歩いているとよく声をかけられた。「ニセモノ ノ トケイ イリマセンカ?」と日本語で。堂々と偽物と言っている。もちろん買う方も分かっているからいいのだが。同じような顔をしていても日本人と分かるのだろう。何度声をかけられたことか。最初は NO と言っていたが、途中から「唔要 (ンイゥ)」と言ってやった。広東語で要らないという意味だ。言ったとたん、ん??? こいつ日本人じゃないのか?とびっくりした顔を見るのが面白かった。

 

 自分はこの手のものは全く興味がないのだが、同行していた後輩は買いたいと言っている。夜、食事の後にウォンゴッ (旺角) 辺りを歩いていると、男が声をかけてきた。もちろん店舗などはなく、どんなものを持っている?と聞くとA3位の大きさの紙を広げて見せる。そこに写真がいくつか貼ってあり、後輩が気に入った時計の写真を指差すとトランシーバーのような大きな携帯電話で誰かと連絡を取っている。OK、すぐに持って来るがここではまずい、一緒にこっちへ来てくれと、男の後をついて行く。細い路地を通り映画館の裏手のような薄暗いところに連れて行かれた。ここで待てと言って男はどこかへ消えた。

 

 後輩と二人だけなら当然こんな所へついては行けないが、取引先の現地人が一緒だから行けたようなものだ。もちろん少し不安ではあったが。5分、10分… 結構待たされた。ようやく男が手に一つの時計を握りしめて戻って来た。有名なR社の偽物である。それを後輩に渡して、確認しろと言う。彼が確認している間、男はこちらを見ない。背中を向けてあたりを見回している。警察がいないか見ていたのかも知れない。OK これでいい と言うと、約3,000円相当の香港ドルを受け取り暗闇の中へ走り去った。まるでギャング映画の取引場面のようだ。

 

 金銭授受の現場を押さえられると現行犯で捕まるらしい。危ない橋を渡っているんやな。もちろん買う者がいるからだろうが。今、このような有名ブランドの偽物は時計に限らず現地で買うことが出来ても帰国時に全て没収されるので、取引はかなり減少していると聞くが、まだあることはあるのだろう。

 

 規制が厳しくなってもまた抜け道を探す。イタチごっこだ。