第39話 ロンドン地下鉄
[1991年4月 英国]
地下鉄は英語で subway と言う。NO! それは英語ではなく米語。subwayと書かれた地下へ降りる階段が街の中にあるが、ここを降りても駅はない、電車は来ない。subwayとは単なる地下道のことだ。地下鉄のことをロンドンでは tube と言うと学校で習った人もいるだろうが、いまだかつて聞いたことがない。では英国人は地下鉄を何と言っているのか? Undergroundが一般的だ。
日曜日、その日はロンドンにいた。部長が気を使ってくれてロンドンで日曜日を過ごせるように日程を組んでくれたのだ。しかも、僕は疲れたから午前中は寝る、昼飯は一緒に行こう。それまでどこでも好きなところへ行ったらエエわ。大学の大先輩でもある部長、感謝です。
ビッグベン、バッキンガム宮殿、ハイドパーク等 有名どころをお上りさん。昼頃ホテルに戻り、部長と合流。午後はどこかへ行こうと、地下鉄の駅へ降りる。ホームで電車を待っていると、一人の男が近寄って来る。ちょっと変なヤツという勘が働いた。注意せよと脳から指示が出る。男が話しかけてきた。
男: どこから来たの? いいカメラ持ってるね。
俺: ありがとう。日本から。
男: Canon?
俺: No, Pentax.
この後 少し何か雑談をしたような気もするが、内容は覚えていない。
男: ちょっとファインダーを覗かせてくれないか?
俺: あぁ、いいよ。
と言って肩にかけたストラップをはずすことなくカメラだけを男の目の前へ差し出した。カメラも自分で持ったまま。男はふんふんと言いながら覗いた後で、ありがとう と言って去って行った。
このやりとりを少し離れたところで見ていた/聞いていた部長が寄って来て「さすがやな、どうするのかなと思って見ていた。ストラップを肩から外したら即こっちへ来るつもりやった」と。
自分のことを石橋を叩いても渡らない男だと言う友人もいる。慎重な男であることは間違いない。慎重過ぎる!? (笑)
この翌年だったか、部長はアメリカのロス・アンジェルス(Los Angeles)空港で置引きに合いスーツケースを盗まれるはめに (>_<)