第44話 爆弾所持容疑
[1991年4月 ロンドン・ヒースロー空港]
いよいよ搭乗の時刻がせまり、最後の持ち物検査とボディチェックが始まる。何事もなくパス。カバンを持って数歩進んだところで、待ての指示。こっちへ来いと通路脇の机の前へ連れて行かれた。
手荷物のブリーフケースを指差して机の上に置けと言う。指示に従う。係官の特権でカバンを開ける。中から手のひらサイズの電卓を取り出して机の上に置いた。そして、適当にボタンを押せと言う。どういうこと？ まったく理解できないまま言われた通りにする。適当な数字が表示されては消える、を繰り返す。しばらくして、OK 行ってもいいぞ。無罪放免。何やったん？
時は1998年のベルファスト合意よりも前。まだ北アイルランド紛争は続いている。テロリストが使用する武器のひとつに電卓型爆弾があったそうだ。それを危惧しての抜き打ち検査が行われるとのこと。
しかし、なんで俺が対象になった？ どう見てもコテコテの東洋人顔。紛争とは無縁に見えないか!?
