[1994年7月 カナダ]
1994年7月16日土曜日。海外出張に行くと仕事後や休みの日は、慣れない土地でもあり現地の人が何かと気を使ってどこかへ連れて行ってくれたりするのだが、この日取引先の人たちは親戚の結婚式や引越し等でどうしても時間が取れないとのことで一日中一人で過ごすこととなった。みんな申し訳なさそうだったが、いやいや適当に過ごすから全く心配ご無用ですよ。海外で丸一日一人だったのはこの時が初めてだと記憶する。
トロントの第一の観光地は何と言ってもナイアガラの滝 (Niagara Falls)だろう。バスで往復6時間ほどのツアーもあり、それに参加すればいいとも言ってくれたが、半日以上を費やすのももったいない。ナイアガラは見たい気もするが、それよりもトロントのダウンタウンをうろつく方が面白そうだ。
ホテルは郊外のエグリントン通り東 (Eglinton Avenue East)にあった。ダウンタウンへ行くには地下鉄を利用したいが、地下鉄のエグリントン駅までは 4kmほどある。バスはあるが一本道だ、歩くことにする。念の為 ホテルの前に停まっているタクシーの運転手に確認する。
俺 : エグリントン駅はこの道を真っ直ぐですね?
運転手: あぁそうだ、そこにバス停があるよ。それともタクシーで行くか?
俺 : ありがとう。歩きます。
運転手: 歩くって!? 1時間以上かかるよ。
俺 : No problem!
彼は笑っていた。
通りは広いが、交通量は多くなく比較的静かだ。大きな公園があり、カナダの国旗に象徴されるカエデの木がたくさん植わっている。日本のモミジと違い、掌ほどの大きな葉っぱだ。夏ゆえに青々としている。赤いのが見たかったな。木陰の草の上を黒い小さなものが走った。リスだ。リスそのものをほとんど見たこともないのに野生のリスなんてもちろん初めてだ。チョロチョロと走り可愛い。道路へもお構いなしに飛び出し、よく車の犠牲になるそうだ。そんなカナダを感じながらエグリントン駅に到着。ここから地下鉄でダウンタウンへ向かう。