tokuchan-worldのブログ

外国ってこんなとこ〜

第65話 不審者じゃないですよ

パナマ市内

 

[1994年7月 パナマ]

 

 出張先ではいつも通りの打ち合わせ。二日目になり慣れてくると、ブラブラと歩いて町並みを見てみたい気がして、迎えに来なくていいよと言ってホテルから取引先まで歩いて行くことにした。

 

 朝の通勤ラッシュ、ホテルの前の大通りは車が渋滞している。おまけにクラクションはお構いなしに鳴らすのでうるさい。横断歩道はどこかにあるのだろうが、信号機までもちょっと距離がある。車の合間を縫って横断する人が多い。が、香港のところでも書いた通り、日本と違って歩行者が優先されるわけではない。もし車に当てられても車道に出てきたオマエが悪いで済まされるだろう。慣れていない自分にはちょっと無理か。

 

 警官がいるので聞いてみよう。横断歩道はどこにあるのですか? 怪訝な顔をされた。英語が全く通じない。こちらもスペイン語は分からない。あぁ結構です と立ち去ろうとすると、腕を捕まれちょっと待てと言われているみたい。掴んだ腕を離そうとしない。そして大声で少し離れたところにいるもう一人の警官を呼ぶ。不審なヤツと疑われているのだろうか? 彼がやって来て何やら話をしている。駆けつけた警官は少し英語が分かるようで、どうしましたか?と聞いてきた。いやいや、安全に道を渡れるように横断歩道はないですか?と尋ねただけなんですが。彼は、あそこにありますよとさっきまで彼がいたところを笑いながら指差した。

 

 無事に道路を渡り、住宅街を抜けて行く。事務所に近づくと工場や大きな倉庫が目立つようになってきたが、大きな門はすべて閉まっている。今日は平日なのに休業か? と思っていると一つの門が開いてコンテナーを牽引した大きなトラックが出てきた。門から中が見えた。たくさんのトラックや人が行き来している。治安が悪い為 日本のように開けっ放しはあり得ないのだ。常に守衛が確認してから門の開閉を行っている。

 

 そして取引先に着いた。入り口のガラス戸を開けようとしたがやはり施錠されている。中から女性がこちらを見て開錠してくれた。