tokuchan-worldのブログ

外国ってこんなとこ〜

第104話 シベリアの大地

通常の日本-欧州航路

 

[1997年6月 アムステルダム => 関西国際空港]

 

 出発準備完了。トーイングカーに押されて機体はゆっくりと後退し、向きを変え滑走路へと向かってタクシングを始める。機内ではスチュワーデスが非常時の説明をしている。申し訳ないが、自分も含めてこれを真剣に見て/聞いている人はあまりいない。飛行機に乗り始めた頃は注意していたが、慣れてくると見なくなってしまう。

 

 もうすぐ欧州から離れる、もう少し外の景色を見ておこうと窓の外に目を向ける。滑走路脇の草むらから一羽の鳥が垂直に飛び上がった。雲雀だ。垂直離陸するのは知っていたが、見たのは初めてだった。そして目を草むらに戻すと、今度はうさぎが一羽ピョンピョンと跳ねている。のどかな空港の一面だった。

 

 滑走路の端で一旦停止。機長は管制塔と最後の交信中だろう。ジェットエンジンの音が高くなり一気に加速、ローテイト、機体が中に浮く。緊張する瞬間だ。いつも、このまま上昇してくれと祈る。

 

 規定の高度に達して水平飛行になり、その後昼食が用意される。食事が終わりしばらくすると夜が近づく。欧州から日本へ向かう便は地球の自転と同じ方向に向かう為、昼過ぎに出発すると夜になるのが早く、短い時間でまた夜が明ける。

 

 もうすぐ暗くなるのかと思いきや、まったく暗くならない。白夜だ。高緯度のシベリア上空を飛ぶので夏は暗くならないのだ。乗客が眠りやすいように機内は消灯されブラインドを下ろすようにと機内放送が流れる。

 

 時々眼下の景色を見ようと少しブラインドを開けるのだが、何度開けても薄い緑色の大地が見えるだけ。同じ景色が延々と続く。ツンドラだ。今は夏、少し緑が見えるが、冬になると雪と氷に覆われ真っ白になり、昼間でも太陽の光から隔離された暗闇の世界が広がる。過酷な世界を垣間見た気がした。