第137話 引き金に指が
[1998年6月 ベネズエラ カラカス]
南米は治安が悪い。誰もがそんな印象を持っているだろう。その通り。サンチアゴやブエノスアイレスはそれほどでもないが (と言っても日本に比べればかなり悪い)、ここベネズエラやコロンビア辺りはかなり悪い。暑い地域はそうなるのだろうか?
仕事が終わり、取引先の二人と三人で夕食に行った時のこと。ちょっと良さそうなレストランへ連れて行ってもらった。駐車場に車を停めて、レストランの入り口へ向かう。入り口にはガードマンらしき男が椅子に座っている。我々が近づくと立ち上がり、何人だ? と聞く。三人と答えるとこちらをしげしげと見ている。怪しいヤツかどうかを見極めているのだろう。
何もないと判断すると、OK 入っていいぞ と腹のあたりで手を右から左へ振る。が、よく見るとその右手には拳銃がしっかりと握られている。しかも人差し指は引き金にかかっている。もしこちらが悪人で何かしようものならすぐにでも発砲できるようにしている。日本ではまずお目にかかることのない光景だ。
お金のありそうな場所は常に狙われているということだろう。いつも危険と隣り合わせ。生活環境が大きく違うことを思い知らされた。