tokuchan-worldのブログ

外国ってこんなとこ〜

第138話 金 返せ!

残ったままのウルグアイ ペソ

 

[1998年6月 ベネズエラ  カラカス]

 

 その日は2週間弱の日程を終え、南米大陸を離れるべくカラカス空港にいた。チェックインも済み、あとは米国はマイアミ行きの便に搭乗するのを待つのみだ。チェックインはいつも早めに済ませ、カフェでビールを飲みながら時間を潰す。帰国すればややこしい経費の精算が待っている。領収書などは毎日整理しているので問題ない。残った現地通貨は米国の空港で両替するため各国ごとにまとめてあるのを再確認しておこう。

 

 財布を開けてビックリ! ウルグアイの紙幣 (ペソ) がぐんと減っている!?!? あっ、今ビールを買った時にベネズエラ通貨 (ボリバル) ではなくウルグアイ・ペソで支払ってしまった。1杯300円ほどのビールに約6,000円を払ったことになる。ウェイターを呼ぶ。先ほど支払う時にカウンターにいた男だ。

 

 間違えたのはこちらなので低姿勢で「先ほど、ビールの代金を違う通貨で支払ってしまいました。すみませんが、ボリバルと交換してもらえませんか?」と言うと、この男「そうだったか? もう済んだことだから交換はできない。」と言ってきた。「間違えたのはこちらが悪い。でも初めての土地で紙幣を見間違えた。申し訳ないが交換して欲しい。」とお願いしても、「間違えたあんたが悪い。支払いは終わった。」の一点張り。瞬間湯沸かし器点火!

 

 「人が謝ってるのにその態度は何や! しかもカウンターで支払っている時にその紙幣を見てたやろ! この国の人間なら違う紙幣だとわかったはずや。それを素知らぬ顔で 掴んでレジに入れてたやないか! 何でその時に言ってくれなかった!」思わず大きな声で怒鳴っていた。周りの席にも何人かお客さんがいたがビックリしてこちらを見ていた。

 

 男は英語が上手ではない。胸のポケットから男の子の写真を取り出して何やら言っている。どうやら「俺には小さな子供がいて働かないといけない… 云々」と言っているようだ。「そんなこと知るか! 子供の為と思うなら真面目に働け。人が困ろうが騙そうがどうでもいいのか!?」何を言おうが対処しようとしない。こんなことが当たり前に通る国なのか。腹が立つが、諦めるしかないのか。しかし、ただ単に諦めるのは悔しい。「交換してくれないなら、もう1杯ビールを持って来い。ただしその代金は支払わないからな。」男はカウンターの方へ戻って行った。

 

 すると今度は違う男がビールを運んで来た。ビールをテーブルに置く手と同時に、もう一方の手もテーブルに伸びて来てウルグアイ・ペソを置いた。男の顔を見上げると少し微笑んでいる。お〜 ありがとう! 「見慣れない紙幣だろうが、間違うなよ」間違えた全額が帰って来たので、2杯分をベネズエラボリバルで支払った。

 

 ウルグアイ・ペソは1万円分ほど残っていたが、ウルグアイを離れる時に両替をする時間がなく持ったままだった。アルゼンチンで両替しようと思ったのだが銀行ですら両替不可だったのだ。隣国の通貨でありながら銀行でも両替できない。それだけ信用のない不安定な通貨なのだ。ベネズエラはもちろん南米の窓口である米国のマイアミでも出来なかった。つまり、ウルグアイ国内でしか通用しない紙幣/通貨なのだ。

 

 その後ウルグアイへ行く機会はなく、結局今でも持ったままだ。いくら高額だからといっても使えない紙幣を、あの男はどうするつもりだったのだろう? どこかに両替できる裏ルートがあるに違いない。