第152話 日本大使公邸
[1999年9月 ペルー リマ]
一日の仕事を終え夕食へ行くことに。今日の仕事は最後に予期せぬことがあった。代理店の営業マンが15人くらい会議室に集まっている。商品に対する質問に答えたり販売の為のアドバイスをしてやって欲しいと言われた。彼らから質問攻めにあい、終わるのが遅くなった。
外は既に暗くなっている。社長のフェルナンドとその助手が運転する車でレストランに向かう。右か?左か?とうろうろする。レストランへの道を迷っているのだろう。が、それらしい明かりもなく街灯も少ない住宅街をさまよっている。すると、急に車を停めてここだここだと言いながら左を指差している。その方向を見てみると電灯もない闇の中に大きな建物があった。ん? これがどうした? 覚えてるだろう、2年前に銃撃戦のあった日本大使公邸だ、と。
1996年12月17日に起きたテロリストによる日本大使公邸襲撃、占拠事件があった場所だ。4ヶ月後の1997年4月22日にペルー警察が突入し、犯人側との銃撃戦の末ようやく事件は終結。人質3名が犠牲となり、犯人14人は全員死亡という壮絶な幕切れだった。突入の決断を下した当時の大統領は、日系二世のアルベルト・フジモリ氏であった。
周りは静かな高級住宅街、こんなところで銃撃戦!? 日本ではとても考えられない。日本において銃とは、権威や権力を持った者だけが使用できる特殊な存在であるが、ここでは特別なものではなく、誰もがごく簡単に使用できるものなのだ。が、その引き金を引くか否かは使用者の倫理次第だ。
このあと夕食はどんなところへ行ったのか覚えていない。