第163話 溢れる水
[1999年9月 トリニダード・トバゴ ポート・オブ・スペイン]
仕事はまずまず順調に終わり、移動の日となった。同僚は朝早い便で先に米国へ戻って行った。ピーターは我々を別々に空港まで送ってくれた、つまり来た時と同様にまた2往復してくれたのだ。感謝。
出発前トイレに行き水を流す。わぁ~ 洗浄水は止まることなく出てくるし排水が遅い! どうなってるんや! 水位は徐々に上がってくる。中にお荷物はなく、水だけなのだが焦る。
部屋にあったタオルやバスローブなど全てを使ってバスルームの出口に敷き詰める。そして電話へダッシュ! トイレの水が溢れている、もうすぐ部屋に流れ出るかも知れない。フロントにそう言うと、すぐに行くから待っていてくれとのこと。しかし、しばらく経っても誰も来ない。
タオルたちはまだ踏ん張っているが、彼らが力尽きるのも時間の問題だ。出発の時刻も刻一刻と迫ってくる。ピーターももうすぐ迎えに来てくれるだろう。もう待っている時間はない。自分はこの部屋から出て行くんだからどうでもエエわ。
荷物を持って、フロントでチェックアウト。当然部屋のこと、電話をしたことを告げたが、後で見ておきますだと。のんびりしてるな。
あの後 部屋はどうなったのか? 俺は知らない。