第184話 水と児童労働
[2009年6月 ガーナ クマシ]
儀式が終わり、村の中へ戻る。土や木の壁、屋根はトタンや板を置いた簡素な家々が並ぶ。すべて平屋だ。土地が広いから上へ積み上げる必要はないが。
家のあるあたりから少し離れたところに子供達がたくさん集まっているので、その方へ行ってみる。井戸だ。手漕ぎのポンプもきちんと設置されている。年長の子供がポンプを動かし、小さな子供達がそれぞれ家から持って来たバケツやタライに水を入れてもらっている。しかし、これをどうやって持って帰るのか? 結構重いはずだ。
下は5歳位から上は15歳前後の子供達だ。皆んなで助け合って小さな子供の頭の上に水の入った容器を乗せてやる。日本なら間違いなく保育園や小学校へ行っている時間帯。小さな頃から過酷な仕事をせざるを得ないこの子たち、それが当たり前と思い友達と笑顔ではしゃぎ回っているのを見ていると涙が出そうになった。見慣れぬ東洋人が珍しいのだろう、カメラを向けると少し緊張しているようだが無邪気に寄って来る。
ポンプを動かせば綺麗な水が出てくる。これだけでもこの村、この子たちは幸せなのかも知れない。井戸もなく何キロも離れた川や池まで水を汲みに行く子供達もいると聞く。汲み上げた水も決してきれいとは言えない濁った水だ。日本に生まれたありがたさが十分過ぎるほど分かる瞬間だった。
夜、ホテルへ戻って愕然とした。洗面所で水を出した。蛇口から出てくる水は透明で綺麗に見える。ふと思いついてこれを洗面所に溜めてみた。深さわずか10cmほどの白い洗面所の底が茶色い水で見えなくなった。子供達の水が入ったバケツの底はきれいに見えていたのに。宿泊したところは4つ星ホテル。