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外国ってこんなとこ〜

第3話 初めてのパスポート

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始めて取得したパスポート「数次旅券」

 

[1982年 秋 大阪]


 15人ほどの小さな会社ながら当時は景気が良く、年に一度の社員旅行は海外と決まっていた。まだ海外旅行の費用は福利厚生の必要経費には認められていない時代に。旅費を特別ボーナス支給という形で処理していた。もう時効だから言ってもいいだろう。自分はアルバイトである為当然参加させてもらえないのであるが、最後の年に社長の計らいで参加させてもらえることになった。感謝。

 

 前述の通りボーナスが支給されたことになり税金が追徴された(苦笑)が、今思えば 自分の人生を決めると言っても過言ではない有意義な授業料だった。

 

 初めての海外、パスポートはまだ持っていない。当時のパスポートは、一度だけ渡航できる「一次旅券」と5年間有効の「数次旅券」の二種類があった。どちらを取得するにしても費用が必要だ。社長の奥様である常務取締役が、お金ないやろ? とパスポートの取得費用1万円を出してくれた。1万円は数次旅券取得の費用だ。常務が、若いしこれからも海外に行くことはあるやろうから数次旅券を取っとき、社長には内緒やで と。1万円といえば当時の2.5日分のバイト料だ。またまた感謝。

 

 さらにパスポート申請には預貯金通帳のコピーを提出する必要があった。海外から帰国するだけの残高があることを証明するために。今でも途上国などでは有名スポーツ選手でさえもが海外へ行き、そのまま逃走して帰国しないということがある。当時は日本政府も国民に対してこれを懸念していたのだろう。通帳はあることはあるが、そんな残高はない。社員の一人が10万円を貸してくれ、これを入金し通帳をコピーして即出金、そして返金した。10万円の残高があったのはわずか30分ほどだろう()。またまたまた感謝。

 

 こうしてようやく手に入れた初めてのパスポート。みんなの協力が詰まった重いパスポートになった。感謝、感謝、感謝、ありがとう!