第9話 児童労働
[1982年11月 グィリン(桂林)]
日中のグィリン(桂林)市内。ホテル近くの公園では早朝から多くの人が太極拳をやっている。うわさ通りだ。
少し郊外へ行くと農作業をする人たち。先にも記したが道路は殆どが未舗装なので凸凹だ。車はかなり上下左右に揺れる。子供の頃の近所の道を思い出す。20〜30年前に時が戻ったようだ。この日は雨上がりの為 道路のあちらこちらに水たまりができている。歩行者がいるとバスは水をかけないように速度を落とす。
ゆっくりと追い越したのは牛。農作業用だろう。驚いたことにこの牛を引いているのはまだ10才くらいの少年だ。学校へ行っているはずの時間帯だが、貧しくて行く事が出来ないのだろうか!? この歳で家計を支えているのだな。自分が幸せなことに感謝。そしてよく見ると手にはタバコ。作業をする一人前の大人の格好だ。追い越しざまに見た彼の恨めしそうな眼差しは忘れない。
バスの窓から見た光景で忘れられないものがもう一つ。道路沿いにある一件の家の外で女性が椅子に腰掛けて本を読んでいる。何でこんなところで？と思ったが、家の中は電灯がなくて暗いから明るい外で読んでいるのだそうだ。まだ電気は全戸には普及していない。
